松岡ようじ
ガラスが自らの重みで自由になり、本来なりたい姿へと還っていく。
30年以上にわたり吹きガラスと向き合い続けてきた松岡ようじさんが辿り着いたのは、作為を手放し、素材の意思に静かに寄り添う「塊(Mass)」の造形でした。
ぽってりとした贅沢な厚みは、単なる実用のためのものではありません。
ガラスに十分な質量があることで熱が長く保たれ、重力に従ってガラス自身が自然な形へと変化していく「自由な余白」が生まれるのです。
「自分がデザインを押し付けるのではなく、ガラスがなりたい形を見守る」。
そう語る松岡さんのうつわには、水あめのように流動していた瞬間の有機的な揺らぎが、そのまま封じ込められています。
無色透明なガラスや、独自の配合から生まれるノスタルジックな琥珀色のガラスが幾重にも重なり、分厚い縁に光が溜まる様は、澄んだ湧き水のよう。
うつわに水を注げばガラスとの境界線がフッと消え、空間に自立する神聖な「水の塊」が立ち現れます。
それは決して緊張感を強いる「工芸品」ではなく、日々の食卓でいつまで眺めていても目が楽しい、おおらかで温かな塊です。
作為を手放した先にあらわれる、純粋な物質としての強さと美しさ。日常に静かな重力を落とす「光の塊」を、ぜひご体感ください。
<略歴 / PROFILE>
松岡ようじ / Yoji Matsuoka
1967年 広島県生まれ
1990年 多摩美術大学 卒業
1993年 山梨県足和田村大嵐に工房を設立
2009年 神奈川県大和市に工房を移転
@yojimatsuoka